母指CM関節症

こんな症状に心当たりはありませんか?

  • 瓶のふたを開けようとする時、ドアの取手など何かをつかむ時、手が痛い
  • ホチキスやハサミを使う時に痛みがある
  • 手の親指の付け根あたりが膨らんでいる

手の親指の力が必要な時、親指の付け根あたりにピリッと痛みを感じることはありませんか?
「年だから、しょうがない」と、そのままにして過ごしていませんか?

もしかしたら、その痛みは“変形性関節症”のひとつ、「母指CM関節症」かもしれません。

適切に治療を行えば、その分早く痛みや手の機能が改善するだけでなく、悪化して手術といった大掛かりな治療を避けることも可能です。

「母指CM関節症」とは?

母指とは「親指」のこと、CM関節とは「親指と手首の間にある小さい関節」のことで、一般的に「母指CM関節」というと“親指の付け根の関節”を指しています。

親指のCM関節は、柔軟に動きやすくなっているため、物を掴む・握るという動作が可能です。

また、「変形性関節症」とは、骨と骨を繋ぐ関節をクッションのような役割で覆っている軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで痛みや骨の変形が生じる疾患です。

つまり、「母指CM関節症」とは、親指の付け根のCM関節にある軟骨がすり減って、痛みや変形が生じている状態です。

(画像引用)公益社団法人 日本整形外科学会 母指CM関節症

「母指CM関節症」の症状

だるい痛みから始まり、軟骨のすり減りが進んでいくと、ズキッとした強い痛みが出るようになります。

  1. 物をつまむ時、瓶のふたを開ける時など親指に力を入れる動作で痛みを感じる。
  2. 親指が開きにくく、親指の付け根あたりが膨らんでいる。
  3. 進行してくると、親指の指先の関節が曲がり、付け根側の関節が反った「白鳥の首変形(スワンネック変形)」や亜脱臼(あるべき場所から部分的にずれ、外れかかっている状態)になってくる。

「母指CM関節症」の診断のポイント

上記のような自覚症状のほか、レントゲン検査でCM関節に変形(CM関節の隙間が狭くなる・軟骨が硬くなってトゲの様になる・亜脱臼)が見られた場合に、診断がつきます。

母指CM関節症を発症しやすい人:更年期以降(40代~70代)の女性に多い

「母指CM関節症」は、他の変形性関節症と同様、圧倒的に女性の罹患が多くなっています。
特に、更年期以降は加齢による老化現象として、関節軟骨がすり減りやすく、関節の炎症を起こしやすくなります。

また、若い人でもCM関節部分の亜脱臼や骨折後に発症する場合もあります。

「母指CM関節症」の原因

「母指CM関節症」の発症は、加齢、負荷の蓄積、女性ホルモンの影響など様々な要因が関与しているとされています。

1.加齢・老化

加齢によって、骨の新陳代謝の低下が起こるため、関節軟骨のすり減りが起こりやすくなります。
趣味などでよく手を使う人だけでなく、特に何もしていない人でも発症することもあります。

2.親指への負担蓄積

普段意識することはないかもしれませんが、私たちは飲んだり、食べたり、着たり、脱いだりと、手の親指を使った「掴む」「握る」動作を1日に何度となく行い、生活しています。

「母指CM関節症」の原因は、そんな親指の付け根の関節に関節の柔軟さを超えた負荷がかかり続けた結果とされています。

特に、更年期頃の女性は、日常生活の中で長年にわたって家事を行っている人も多く、日々生活の中で、予想以上に手を酷使していて、いつの間にか負担が蓄積していることも多いのです。

3.女性ホルモンの減少

女性に多い理由に、“女性ホルモン”が関係しています。

更年期の時期には、卵胞ホルモンとも呼ばれる「エストロゲン」が閉経に伴い、減少していきます。
エストロゲンは、女性らしい体つきを作る以外にも、腱や関節を柔軟に保つという作用を持っているため、減少することは関節の炎症を起こしやすくなる原因になります。

「母指CM関節症」の治療方法

母指CM関節症の治療は、大きく分けて3つあります。

①保存的治療(装具療法・投薬・温める)

基本となる治療です。

母指CM関節症の治療で一番大事なことは、「親指の付け根をできる限り動かさず、休ませること」です。
軽症であれば、患部に湿布を貼って、固定しているだけでも多くのケースで痛み・腫れなどの症状が改善します。

  • 装具療法(患部の安静)
    できるだけ長時間の装着を2~3ヵ月続けます。
    固めの包帯を親指から手首にかけて、8の字に巻いて動きを制限(テーピング)することも良いでしょう。
    →日中の装着が難しくても、夜間だけでも必ず装着していれば効果はあるとされています。
  • 投薬治療(湿布など外用薬や内服の消炎鎮痛剤)
  • 患部の温め

②ステロイド注射

痛みや腫れが強く、仕事や日常生活に支障を来す場合や、投薬治療などを行っても改善が見られない場合には、関節の中にステロイド注射(局所麻酔入り)を投与して、炎症・腫れ・痛みを押さえます。
使用量は少量ですが、短期間に頻回接種すると合併症(軟骨の損傷など)が起こる可能性もあります。

③手術

痛みが強く、亜脱臼を伴う高度な関節の変形・親指の白鳥の首変形が起こっている時は、手術が適応されます。
手術は、全身麻酔または腕の局部麻酔で行われ、1~2時間程度かかります。
術後3~4週間はギプス固定が必要となり、その間強く握る動作は禁止です。
強く掴む動作は術後3ヵ月を目標に、術後4週間くらいからリハビリを開始します。

  • 切除関節形成術
    CM関節を構成する片方の骨(大菱形骨:だいりょうけいこつ)の一部を切除して、CM関節周囲の靱帯を再建します。
  • 関節固定術
    CM関節の表面を削って、関節を固定します。
    進行した母指CM関節症や手に高度な負荷がかかる力仕事が必要な人に行われることがあります。

(画像引用)公益社団法人 日本整形外科学会 母指CM関節症

母指CM関節症の予防

手の親指は、手を使う上でどの指よりも使用頻度が高いので、残念ながら、完璧な予防は難しい状況にあります。

だからこそ、重症化を防ぐには、日ごろのセルフケアが重要です。

セルフケア

  1. 自覚症状が出てきたら、早めに悪化しないようにテーピングなど保護・固定す
    夜だけの固定でも効果的です。早い段階で炎症を食い止めることが大事です。
  2. 日ごろから大豆製品(豆腐・納豆・煮豆・みそ等)をバランスよく摂取する
    大豆に含まれる「大豆イソフラボン」は、「母指CM関節症」の発症を予防する「エストロゲン」と似た作用を持ち、「植物性エストロゲン」とも呼ばれています。
    日頃から、積極的に摂取しておくことで、関節の炎症を鎮める作用が期待できます。

ひどくなる前に早めの受診を!

「母指CM関節症」は、軽症の段階では時間経過とともに症状が良くなっていくこともあります。

しかし、CM関節への負担が蓄積した結果、“将来的に「母指CM関節症」を発症する可能性がある“ということを忘れてはいけません。

当院では、患者さん一人一人の症状に向き合って診察し、保存的治療から、手術可能な医療機関紹介まで安心できる治療を心がけています。

よく使う手だからこそ、「おかしいな」と思った時、しばらく安静にしていても症状が良くなっていかない時には放置せず、できるだけ早めに治療を受けましょう。

著者
院長

いしがみ整形外科クリニック院長 石神 等

日本整形外科学会認定専門医
日本骨粗鬆症学会認定専門医

さたけ整形外科リハビリクリニック院長 佐竹 厚志

日本整形外科学会認定専門医
日本体育協会公認スポーツドクター

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