オスグッド病

オスグッド病

スポーツをやっている小中学生をお持ちの親御さん、お子さんからこんなことを申告されたことはありませんか?

  • スポーツをしていると膝が痛い。でも休むと治る。
  • 膝のお皿の下骨が出っ張ってきた(腫れてきた)。

もしかして、それは成長期のスポーツ少年・少女に多い「オスグッド病」かもしれません。

「子供の膝の痛み」というと、(外傷がないのであれば)しばらくすれば治る“成長痛”と思われる方も多いかもしれません。

しかし、オスグッド病は進行性のスポーツ障害なので、痛み・腫れの放置は長期の運動休止や外科的な治療が必要となる可能性があり、早期対応が大事な疾患です。

オスグッド病とは

オスグッド病とは、太ももの前面にある大きな筋肉(大腿四頭筋:だいたいしとうきん)が、成長しきっていない膝のお皿の下骨の一部(脛骨粗面:けいこつそめん)を引っ張りすぎることで成長軟骨を剥離させてしまい、痛みや腫れが起こる疾患です。

(画像引用)日本整形外科学会

オスグッド病の症状

上記の図のように、脛骨結節(膝のお皿の下骨)の軟骨が剥離している状態なので、オスグッド病の症状は、膝のお皿の下骨あたりに現れます。

  1. 膝のお皿の下骨が突き出てくる。
  2. 膝のお皿の下あたりが赤く腫れる、熱を持つ、痛みがある。
  3. 運動をすると痛み、休むと治る。

上記の特徴的な症状に加え、問診(性別・年齢・スポーツ活動の有無など)やレントゲン検査、MRI検査・超音波検査などで、脛骨粗面に剥離した小さな骨のかけらなどが見られた場合には、診断が確定します。

オスグッド病が起こりやすい環境・年齢・性別

オスグッド病が起こりやすい人には、以下の特徴があります。

  • スポーツを盛んに行っている。
  • 10歳~15歳くらい(小中学生)の成長期の男の子。

オスグッド病はスポーツ全般で起こり得ますが、特にジャンプなど膝屈伸が多いバレーボール・バスケットやダッシュやキック動作をする野球・サッカーを熱心に行っている場合に起こりやすくなっています。

以前、日本では頻繁に部活動などでトレーニングの一環として行われていた「うさぎ跳び」が禁止となった背景には、このオスグッド病の発症率が影響しているとされています。

オスグッド病の原因

オスグッド病は、2つの要因が重なることで発症しやすいとされています。

要因①未成熟な骨が多数存在する「成長期」

小学高学年~中学生になると、クラブ活動や部活動などこれまでに増して熱心にスポーツを行うことも多くなります。
この時期は、ちょうど男の子の成長期に重なり、急激に軟骨から骨へ変わり、身長が伸びる子も少なくありません。

しかし、筋肉や腱などの軟部組織は、骨と同じように成長できないため、成長期は太もも前の筋肉(大腿四頭筋)の柔軟性が低下して、硬くなります。

また、成長期の子供たちの骨には、骨が成長するのに必要な新しい骨(骨端核:こったんかく)が沢山存在しているため、比較的強度が弱い状態です。

要因②膝の曲げ伸ばしの動作をやり過ぎて、軟骨に負荷をかける

膝を使う(曲げる・伸ばす)動作は、膝前面にある大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)および付着する膝蓋腱(しつがいけん)が脛骨(けいこつ:すねの骨)を引っ張ることによって行われています。

上記2つの要因が重なり、成長期に太ももの前の筋肉や付着する腱が、繰り返し脛骨を引っ張り過剰な負荷をかけることで、未熟な骨や軟骨の一部が剥がれてしまい、痛みや腫れが生じてしまうのです。

オスグッド病と成長痛との違い

成長痛とオスグッド病は、どちらも成長期に下肢(足)痛みが出る疾患なので、“成長痛”と呼ばれることがあります。

しかし、オスグッド病はスポーツに起因する障害なので、成長病とは以下の点で差異があり、正確には異なる疾患です。

  1. 起きやすい年齢層
  2. 痛みの頻度、場所
  3. レントゲンでの異常の有無

オスグッド病の治療方法

オスグッド病は初期の段階で発見・治療開始することが、結果として早期復帰に繋がります。

オスグッド病の応急処置

膝のお皿の下の骨に痛み・腫れを感じた場合、アイシングをしましょう。
アイシングは、お皿の下の骨やその周辺を氷で冷やします。

(画像引用)日本整形外科学会

①保存的治療:患部の安静、運動の制限

オスグッド病の基本治療は、「患部を休めること」です。

患部以外はトレーニングを続けることも可能です。
症状が初期であれば、部活動における「練習量を減らす」もしくは「安静にする」ことで症状が治ります。

痛みを我慢して今まで通り運動を続けると、悪化して手術が必要になる場合もあります。

また、症状を悪化させないためには、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を伸ばすストレッチが効果的です。

(画像引用)日本整形外科学会

もし、膝をつくと痛い場合には、左の図のように立って行うと良いでしょう。

さらに痛みや腫れがある場合には、ストレッチやアイシングと並行して、非ステロイド消炎剤含有の鎮痛剤や湿布薬、低周波治療をするとよいでしょう。

②装具療法:オスグッドバンド

痛みが長期化してきた場合には、脛骨粗面の負荷を軽減するために、膝に専用のサポーター(オスグッドバンド)を装着することも効果的です。

(画像引用)日本整形外科学会

③手術:遊離骨片摘出手術

保存的治療や装具療法を行っても痛みが取れず、スポーツ活動や日常生活に支障を来たしている場合には、外科的治療によって遊離骨片の摘出手術が必要となります。

手術では、骨小骨を摘出し、脛骨粗面部の骨が突き出ている部分を切除して平にします。
予後は、概ね良いでしょう。

オスグッド病になったら、スポーツ復帰はいつから?

オスグッド病発症後は、定期的に痛みの程度とレントゲンでの回復を確認しながら、少しずつリハビリを行い、徐々に運動量を元のレベルに戻していきます。
一般的には、試合形式の練習復帰まで、初期症状であれば平均6週間、症状が進行していた場合には平均13週間かかります。

オスグッド病の予防

成長期に伴う“大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の硬さ“がオスグッド病の元凶となります。
そのため、スポーツの前後には、念入りにストレッチを行って、太もも前筋肉の柔軟性を保つことが大事です。

オスグッド病を予防するセルフケア

  1. 運動前後に、ストレッチして太もも回りの筋肉・腱を柔らかくしておく
  2. 運動後には、必ずアイシングをしてクールダウンを行う
  3. 再発防止には、オスグッドバンドを付けて運動する

また、オスグッド病は軸足に起こるケースが多いので、ジャンプ&ストップなどの動作は両足均等に行うなど、指導者は個人の身体能力や左右バランスを考えたトレーニングメニューを立てることも重要です。

オスグッド病の放置は禁物、早期治療開始が大事!

オスグッド病は外傷がない上、患者さんはお子さんとなるので、運動を休止することが難しいケースもあるでしょう。

しかし、痛いのを我慢して運動を続けていると、かえって長期の運動休止や外科的な手術治療が必要となり、さらには痛みが治ったとしても成人後に再び痛みが出る「オスグッド病後遺症」を発症して手術が必要となる場合もあります。

また、スポーツ少年・少女にとって長期的な運動制限は、身体能力の低下以外にもモチベーション低下など精神的な影響を及ぼす場合もあります。
そのため、オスグッド病はお子さんだけでなく、親御さんやスポーツ指導者においても病態を十分理解していただきたい疾患です。

当院では、患者さん一人一人の症状に向き合って診察し、保存的治療から手術可能な医療機関紹介まで、安心できる治療を心がけています。

「運動すると膝下が痛くなる時」「膝のお皿の下骨が出てきた時」には、放置せず整形外科を受診しましょう。
オスグッド病をしっかり治療して、これからもスポーツを楽しんで下さい。

著者
院長

いしがみ整形外科クリニック院長 石神 等

日本整形外科学会認定専門医
日本骨粗鬆症学会認定専門医

さたけ整形外科リハビリクリニック院長 佐竹 厚志

日本整形外科学会認定専門医
日本体育協会公認スポーツドクター

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