指の痛みやこわばりが特徴の「ばね指」は、日常生活で手をよく使う人に多い疾患です。
進行すると、指が曲がったまま戻らなくなり、強い力で無理に治そうとするとばねのように跳ねて戻ることから「ばね指」と呼ばれており、別名「弾発指(だんぱつし):snapping finger」とも言われます。
ばね指は、最初は軽症でも放置しているうちに少しずつ症状が進行してしまうので、早期の治療と正しいケアを行うことが大切です。
「ばね指」は、肘や手首と同じく、手の使い過ぎが原因で起こる「指の腱鞘炎」です。
進行するにつれて以下のような症状が現れます。
上記のうちの症状が1つでも当てはまれば、「ばね指」の可能性があります。
ばね指は、どの指でも発症する可能性がありますが、特に、親指、中指、薬指に多く見られ、起床時に症状が強く、日中、手を使っているうちに症状が改善するのが特徴です。
初期のうちは軽い痛みや違和感だけで、安静にしていれば回復することが多いですが、症状が進行するにつれ、次第に強い痛みやばね現象が現れるようになり、重症になると、指が全く動かなくなることもあります。
手の指には、「屈筋腱(くっきんけん)」と「靭帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)」という組織があり、腱が靭帯性腱鞘の中を往復するように移動することで、自由に指の曲げ伸ばしができるようになっています。
ところが、何らかの原因で指の腱鞘に炎症(=腱鞘炎)が起きると、腱鞘が腫れて厚くなり、腱の通り道が狭まってしまうので、腱と腱鞘が擦れて痛みを感じるようになります。
擦れた腱の一部にも炎症が起きて肥大化し、腱鞘内を通過する際に引っかかるようになるため、スムーズな動きが妨げられ、指が曲がったまま伸びにくいという症状に陥ります。
曲がった指を戻そうとして、無理に強い力をかけると、腱の引っかかりが外れて腱鞘を通過する瞬間、カクンと跳ねるように指が伸びます。この動きが「ばね現象」です。
ばね指の原因には以下のようなものがあります。
日頃から手や指を酷使している人は、腱と腱鞘に常に大きな負荷がかかっているため、炎症が起こりやすく、特に以下のような動作は、ばね指の発症の原因となりやすいと考えられています。
女性は、妊娠や閉経などのライフステージによってホルモンバランスが大きく変化します。
年齢が上がり、女性ホルモンの分泌が低下すると、筋力や骨密度が低下するだけでなく、腱や腱鞘自体ももろく傷みやすくなるため、ばね指を発症する可能性が高まります。
ばね指は、男女問わず、誰でも発症するリスクがありますが(まれに乳幼児の親指に発症するケースもあり)、特に以下のような方に発症が多く見られます。
50歳前後の女性は、女性ホルモンの分泌により、腱や腱鞘の状態が弱くなる上に、血行不良により腱鞘の内部が狭くなるので、ばね指発症のリスクは高まります。
更年期と同様、妊娠中や出産後の女性もホルモンのバランスが乱れやすく、一時的に更年期と似たような状態に陥るため、ばね指になるリスクも高まります。
関節リウマチや糖尿病のような持病がある方は、末梢の血行が悪いため、ばね指を発症しやすくなります。
さらに、一度炎症が起きると治りにくいので、重症化するケースも少なくありません。
複数の指に発症する場合や(多発性)、一度改善しても再発するケースもあるため、基礎となる持病をしっかりと治すことが重要です。
ばね指の診断には以下のような方法があります。
医師が問診や触診を行い、指の腫れや痛み、ばね現象の有無といった症状を確認することで、ばね指の診断が可能です。
ばね指は、腱と腱鞘の炎症であるため、レントゲンには写りませんが、骨の異常の有無や似たような疾患との鑑別のために、レントゲン検査を行う場合があります。
ばね指の治療は指の可動を良くし、痛みを抑える治療が基本となります。
治療には、大きく分けて症状を改善させるための「保存的療法」とメスを用いて根治を目指す「手術療法」の二種類があり、診断により、以下のような治療を単独または組み合わせた治療を行います。
一度で完治する場合もありますが、思ったような効果が出ない場合や、症状が再発した場合には、再度、注射を行う必要があります。
ただし、ステロイド治療は頻繁に行うと、感染症や、腱や腱鞘の断裂などの副作用が起きるリスクが高まるため、治療の回数や頻度は、医師の指示に従う必要があります。
ばね指は、一度発症すると完治に時間がかかるので、まずは発症を予防することが肝心です。
特にパソコン作業などをしていると、つい長時間になってしまいがちですが、1時間に一度程度は手指を休ませるようにし、痛みやこわばりなどを感じる時は以下のような方法で、積極的に手や指のケアを行いましょう。
手指を使いすぎて鈍い痛みが出た時や、炎症が起きて熱感があるような場合は、アイシングが特に効果的です。患部を冷やすことで腱の炎症を抑えることができます。
反対に、血流の悪さから手指がこわばる時や痛みが長く続いているような場合には、手を温めるようにしましょう。
洗面器などにお湯を溜め、しばらく手指を温めると血流が改善し、つらい痛みを和らげることが可能です。
痛みがあると、だんだん指を動かさなくなるほか、安静にするため長い間固定していると、ますます血流が悪くなり、関節自体も固くなるため、適度な運動で柔軟性を保つことも大切です。
時折、「腕を上にあげてブラブラ振る」「手でグーパーを繰り返す」などの動きを行うだけでも効果がありますが、この後、ご紹介する簡単なストレッチを行うと、腱の緊張や腱鞘との摩擦を和らげ、発症を予防する効果が期待できます。
手首を軽く反らせた状態で、ブロック状のものを指の腹と母指球(親指の付け根)で挟み、指の付け根(屈筋腱)を縮めるように力を入れて押し合う。
軽く手首を反らせた状態で、指を伸ばし、反対側の手でさらに反らす
※ストレッチは適度な負荷で無理せず行いましょう。万一、ストレッチを行い、痛みが強くなるような場合にはすぐに中止して、医師に相談をしてください。
私達の日常生活の中で、手をまったく使わないという日はまずありません。
普段は意識することなく使っていますが、一旦、炎症が起こり、痛みなどの症状が出るようになると、「掴む」「握る」「物を持ち上げる」といった基本的な動作さえも難しくなり、仕事や家事に大きな支障をきたすようになります。
手指の安静を保つのはなかなか難しいですが、まずは手の使い過ぎを避け、こまめにストレッチなどのケアを行うことで、ばね指の進行を防ぐことが大切です。
それでも症状が改善しない時や、悪化するような場合には、早めに整形外科を受診するようにしましょう。
当院では、一人一人の患者様の症状に合わせて、オーダーメイドな治療を行っています。
院長が実際に試して厳選したリハビリ器材なども多数揃えておりますので、手指の痛みや違和感など、気になる症状がある方は、ぜひ当院にご相談ください。