膝関節の再生医療

再生医療を、身近に

はじめまして!このページを読まれているあなたは、色々な思いがあると思います。

「膝の痛みに悩み、整形外科のクリニックや接骨院で治療しても改善しない」
「手術を勧められたが、今はまだちょっと……」
「お母さんが膝が痛そうで、なんとかしてあげたい」

私は勤務医時代、膝関節の専門として、1000例以上の人工膝関節手術を経験してきました。また平成29年に開業し、現在は年間で3万人以上の患者様を診察しています。開業した現在も、以前勤務していた病院で手術をしています。その経験の中で、従来の「手術をしない治療(保存治療)」と、「手術による治療」の間で多くの方が悩んでいることを、毎日のように感じています。

近年注目されている膝関節の再生医療は、そのような方の悩みを大きく改善できる可能性を持っている治療です。どのような治療で、どんな効果があるか。どんなところでできるのか。あなたの疑問と悩みをこのページの中で解決できる助けになれば、これ以上の幸せはありません。
次項から、新しい治療について詳しく見ていきましょう。

再生医療とは?なぜ注目されてきているのか?

再生医療とは、体の組織がダメージを受けたときに、体が本来持っている回復能力をうまく引き出して、その組織を治してあげる医療の事を指します。薬物治療、物理療法(リハビリやマッサージ、電気治療など)、外科治療(手術による治療)などと将来並ぶであろう
、第4の治療の選択肢として近年注目されてきています。

有名な再生医療

再生医療が最初に注目されたのは、ノーベル医学賞を受賞された山中伸弥教授の、iPS細胞からと思われます。ES細胞と合わせて多能性幹細胞と言われ、様々な臓器の再生を促す治療として研究が進められています。

また、ニューヨークヤンキースの田中将大投手が肘の靭帯損傷を多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)療法を行って手術を回避し、復活した事例から再び注目されてきました。最近では、エンゼルスの大谷翔平投手が肘の靭帯損傷に対し、田中投手同様のPRP療法を行い、手術をしないで回復を試みている所でも注目が集まりました。このように一流スポーツ選手や専門のメディカルスタッフも再生医療を信頼し、治療が行われているのです。

再生医療のメリット

患者様自身の血液や脂肪などの組織を用いて治療するので、薬物治療などによる副作用や、外科手術などによる感染、出血などの合併症が少ないことがメリットです。また手技も比較的簡便なので、入院も必要がありません。

再生医療の問題点

再生医療の問題点としては、先進的な医療で有効な報告は多数ありますが、薬物治療や手術療法と比較するといまだ臨床試験のデータが少ない点があります。どのくらい有効で、持続期間や合併症など、はっきりとした臨床でのエビデンス(統計学的結果)が得られるまでは年月が必要であるのが現状です。したがって、治療が健康保険適用となるのもまだ先で、自由診療で提供しているのが現状です。しかし安全面に関してはすでに証明されており、今後はさらに普及していく治療です。

体の痛み、関節の痛みに対する再生医療

再生医療がどのようなものかを理解する前に、今までの治療がどのようなものかを理解する必要があります。これまでは、痛みのある部位には、痛み止めの飲み薬や湿布といった外用薬が使われます。痛みが治まらなければ痛み止めの注射をします。更に痛みが改善しないで、組織の変性や破壊が進行している場合は手術療法が選択されます。靭帯の損傷については靭帯の再建術が必要になります。これは体の他の部位から靭帯をとってきて、必要な場所に移植してあげる手術になります。また、膝などに代表される関節の損傷に対する手術は、人工関節置換術が代表的な治療です。

保存治療(薬や注射)の効果がなければ手術療法。従来の治療法の間に位置づけされる治療法が再生医療になります。

再生医療の目的

一番の目的は疼痛の改善と炎症成分の減少です。また損傷した組織の自己再生能力を促進し、自然治癒に導いていく事も期待されます。

どのような痛み、病気に効くか

変形性膝関節症

変形性膝関節症は、加齢や内反膝(O脚)、体重などが原因で発症します。膝関節の軟骨がすり減り、痛みが生じます。初期は立ち上がりや正座の時だけの痛みですが、進行してくると階段の昇降や通常の歩行にも支障をきたします。

従来の治療法では、初期は痛み止めやヒアルロン酸の注射などを行い、進行して骨の変形が起こってしまった場合は人工関節の手術が中心になってきます。
再生医療は、ヒアルロン酸などで痛みを改善しない方で、いろいろな事情で手術療法は避けたいと考える患者様に有効な治療法になります。

なぜ靭帯や関節に再生医療が必要なのか?

人間には、損傷した組織を回復させる、自己再生能力が備わっています。この自己再生能力は、血液中にある、血小板という細胞に含まれる様々な生理活性物質が働くことで機能しておきます。したがって、この自己再生能力は、血液の流れが在るところに働くということになります。
ところが、関節の軟骨や、靭帯といった組織には、「無神経、無血管組織」とよばれており、血流がありません。したがって血小板の働きは得られにくく、自己再生能力が低い場所であることがわかっています。

PRP療法

PRPとは、多血小板血漿(platelet rich plasma)の略です。血小板は血液中にある細胞で、血液を固める力の他、様々な生理活性物質が豊富に含まれており、この成分が損傷した組織の回復を早めていきます。

しかし実際の血液中には、血小板は割合はわずか1%未満しか含まれておりません。またこの血小板中にも、損傷した組織の再生に有効な生理活性物質はわずかなのです。そこでPRP療法では、血液を50mlほど(ヤクルト1本分よりやや少ない程度)血液を採取し、遠心分離器で血小板が豊富な部分だけを5mlほど抽出します。あとは靭帯や関節など、損傷している組織に注射するだけで治療は終了になります。皮膚を切開して組織を取り出したり、移植したりは全くしません。もちろん入院も必要ありません。

効果は早い方で3日程度、遅い方でも1か月程度で出てきます。痛みが改善し、持続効果は1か月~最大1年ほど痛みが改善している方もいます。靭帯組織に関しては完全に治癒する例もあります。

また野球肘やテニス肘などの障害にも、炎症部位の回復が認められている報告が多数あります。変形性関節症に対するPRP療法は、変形が進行していない例(K-L分類でgrade Ⅲ)では痛みの改善が報告されており、治療効果が十分期待できます。軟骨が再生し、病気が治癒する状態までの回復はまだデータ不足であり、根本的な治療法としての確立が期待されています。

APS療法

PRP療法は、血液中の血小板を凝縮した液体を幹部に注入する治療ですが、APSはこのPRPをさらに凝縮し、生理活性成分の活発を促進する治療です。この治療により、関節レベルでは、最大2年間痛みない状態が継続している症例もあります。

PRP-FD療法

PRP-FDは血小板由来因子濃縮物(Platelet-derived Factor Concentrate Freeze Dry)の略です。PRP療法は血液から血小板を凝縮し、その液体を幹部に注入する治療ですが、PRP-FDはこのPRPを高濃度に凝縮し、成長因子だけを抽出します。1度の採血で複数回の治療が可能です。

PRP-FD療法のメリットとしては、この加工をすると、通常のPRP療法に比べて、血小板を高濃度に濃縮するので、得られる成長因子も濃度が高くなり、成長因子の総量が2倍になることがわかっています。またフリーズドライ加工をしますので、加工後に成長因子の濃度が時間の経過があっても低下しないというメリットがあります。成長因子常温で6か月間保存が可能ですので、血液採取後、患者様の都合のいい時に来院し、治療をすることができます。

デメリットとしては、通常のPRPと同様に、注射後数日の腫れや痛みが出現する程度です。
方法は、採血後に、厚生労働省に認可された施設に依頼して2~3週間後に作製が完了します。この製剤を膝関節に注射します。

どうやって治療するの?

再生医療と聞くと、「手術なのかな?」とか、「痛いんでしょ」とか、いろいろなイメージがあるかと思います。当院で行う再生医療の手技は、「採血と、痛い場所に注射をする」これだけです。皮膚を切るようなことは一切しません。

副作用は?

作成したPRPを注射したあと、約2割~3割の方に、2~3日ほど注射した場所の痛みと腫れが出ることがあります。この症状は数日で治まります。それ以外の大きな副作用は、今のところ報告されていませんので、比較的安全な治療法であると言えます。

PRP療法 再生医療の臨床実績

これらの再生医療の実績は、国内外で、学会発表や臨床論文として多数あげられています。
PRP療法は、国内でも有効な論文が多数散見されており、いずれも良好な臨床成績を発表しています。

金額はいくら?

これらの再生医療は、安全性が確立され、効果が出ているものの、最新治療であり保険診療として認められるほどの臨床データが少ないため、自費診療での提供になっております。
整形外科でおこなわれる再生医療は、一般的には以下のような金額で提供されています。

PRP-FD治療 1回13万円