リハビリテーション科(リハビリ)

リハビリテーション科は、整形外科など通常の診療科のように「疾患自体」を治すのではありません。
リハビリテーション科は怪我や病気などによって生じた「障害」を対象としています。
残っている能力・機能の中で、いかに元の日常生活を取り戻すかをポイントに、工夫や機能訓練を行って早期復帰を目指します。

また、リハビリテーションは早い段階から行うことが大切です。
痛みがあるからといって、過剰に安静を続けることはむしろ「逆効果」であり、長い間動かさないでいることは筋肉が萎縮して(痩せて)関節の柔軟性を失うため、より動かしにくくなります。
したがって、痛みは痛み止めなど薬で速やかに取り除き、二次的合併症*1の予防やできるだけ早く機能を改善するためにも早い段階からできる範囲のリハビリテーションを取り入れることが重要です。

*1二次的合併症:治療などで長期間動かさないことによって起こる症状。身体能力の大幅な低下・精神的影響が起こる「廃用症候群」や「血栓」「肺炎」など。

いしがみ整形外科クリニックでは、患者様にとって少しでも効果的なリハビリテーション(リハビリ)が行えるよう、医師・スタッフが一丸となりサポートします。どんな小さな心配事でも院長やスタッフまでお気軽にご相談ください。

リハビリテーションとは?

リハビリテーションというと、手術後などに行う「機能回復訓練」のイメージがあるかもしれません。

しかし、リハビリテーション(Rehabilitation)とは、英語の接頭語Re(戻す・再生)とラテン語のhabilis(適した)という言葉が語源であり、機能回復訓練だけでなくもっと広い意味があるのです。

リハビリテーションの目的

WHO(世界保健機関)の定義では「リハビリテーションとは能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するための、あらゆる手段を含む」とされています。

つまり、リハビリテーションは怪我・病気などで生じた障害をできるだけ減らして、残っている能力を活用して機能障害の克服を目指し、元の日常生活や社会復帰を図ることを目的としています。

当院では骨・筋肉・関節・神経などの身体の運動にまつわる組織(運動器)に異常を来した方に対して、主に理学療法(運動療法・物理療法)を行い、患者様の生活の質(QOL)の向上を目指します。 

痛みの時期に応じたリハビリテーション治療

リハビリテーションも治療の一つです。そのため、痛みの時期により行うリハビリテーションの治療目的や内容は基本的に異なります。

急性期(受傷・発症から1か月前後)は、ズキズキしたり強い痛みがあったりするため、「患部の治療」をメインに痛み止めなど薬物療法と並行して、サポーター・コルセットなどで患部を固定して安静を図ります。
また、温熱・冷却などの物理療法、筋力低下や関節が固くなること(拘縮:こうしゅく)を予防するようなリハビリテーションで症状の緩和に努めます。

強い痛みが落ち着いてきた回復期には「痛みの原因治療」として、運動療法(筋力トレーニング・歩行訓練など)や物理療法(電気・音波・レーザー治療など)のリハビリテーションへ移行し、筋肉の柔軟性の改善、筋力強化、正しい姿勢・動作、日常生活指導などを行います。

リハビリが必要となる主な症状

  • 日常生活に支障を来している首の痛み・肩こり・腰痛など
  • 関節の痛み・変形・思った通り動かない・動かしにくい(可動域制限)
  • 交通事故によるむち打ち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)など
  • スポーツが原因となり、慢性の怪我や障害がある(スポーツ障害)
  • 歩きにくい・歩くのに時間がかかる
  • 食事・着替え・トイレの動作など身の回りの動作がうまくできない
  • 麻痺や筋力の低下が起こり、動作が行いづらい
  • 手術を受けたが、痛みなどの症状が続いている

上記のように、リハビリの対象となる疾患は捻挫・骨折など明らかな外傷や手術後だけではありません。

「年のせい」と思われがちな肩こり・腰痛や「原因不明」の変形性関節症・骨粗鬆症・関節リウマチなどの病気、単に加齢によって歩行機能が低下してきた場合でも適切なリハビリテーションを行うことで、機能回復を促して患者様の生活の質(QOL)の向上や社会復帰を図ることが期待できます。

当院のリハビリテーションの特長

患者様とのコミュニケーションを大切にしたリハビリ

当院ではリハビリテーションを開始する際、分かりやすく丁寧な説明を行っています。同時に患者様のお話に耳を傾けることを大切にしています。患者様が安心してリハビリを行えるような環境づくりをスタッフ一同心がけています。

チーム医療の実践

当院のリハビリテーションは、理学療法士・運動器セラピストなどリハビリ専門スタッフが担当しています。ヨガ・ピラティスのインストラクター資格を持ったセラピストも在籍しているので、ヨガ・ピラティスを取り入れた運動療法や姿勢改善を行っています。

また、インソールの資格(Jaft スポーツシューフィッターMaster)を持った者も在籍しています。患者様の体の歪みを適正な状態に修正するためのインソール処方も可能です。

さらにリハビリ専門スタッフだけでなく、医師・看護師・柔道整復師など患者様にかかわる様々な職種のスタッフがチームを組んでサポートしています。患者様とのコミュニケーションや定期的な検討会(リハビリカンファレンス)を通じて、現在の状況・治療方針を確認・評価・共有し合い、今後のリハビリテーションに生かします。

個別指導による運動療法

医師の指示の下、理学療法士・運動器セラピストなどのリハビリ専門職が患者様の状態に合わせて1対1で運動療法の指導を行っていますので、ご高齢の方でも安心してお受けいただけます。

スポーツ障害や手術後のリハビリにも対応可能

当院では、捻挫からスポーツごとの特異的動作までスポーツ障害に対する様々なリハビリテーションに対応しており、早期の競技復帰を目指します。

また、他院で行った手術(人工関節術、膝の骨切術、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、側弯症の手術など)の術後リハビリにも力を入れています。お気軽にご相談ください。

当院のリハビリテーションの流れ

1 問診表の記入

受付で問診表をご記入ください。ご記入が難しい場合、スタッフまでお声がけいただければ、代理で記入致します。

2 検査および医師の診察

患者様の自覚症状や受傷状況などについて、医師が丁寧に問診を行います。 また、触診・視診で筋肉や腱の張り・骨格・姿勢などの異常の有無を確認し、X線検査(レントゲン)・超音波検査(エコー)で詳しく調べ診断します。 必要に応じてMRI・CTなどの画像診断や血液検査による炎症反応などを行うことがあります。

診察の結果、医師が「リハビリテーションが必要」と判断した場合、リハビリテーション指示書を作成します。当院のリハビリテーションは「予約制」としているため、初回予約をお取りします。 ※診察当日にリハビリ予約に空きがあれば、当日リハビリを受けることも可能です。

3 理学療法士による評価

初回予約時に理学療法士が機能評価(関節の動き・筋肉の柔軟性・筋力・姿勢・動作など)を行います。

4 リハビリメニューの実施

患者様のご要望に沿ったリハビリメニューを行っていきます。

当院の1回あたりのリハビリテーションにかかる時間の目安は、次の通りです。 ※混雑状況によっては、少しお待ちいただくこともあります。ご了承ください。

  • 運動療法:約20分
  • 物理療法:一つの機械につき約10分

また、リハビリ終了後に次回のリハビリ予約をお取りします。

5 再評価

定期的に理学療法士が患者様の身体状態や機能(関節の動き・筋肉の柔軟性・筋力・姿勢・動作の癖など)を確認・分析して、リハビリ内容の見直しを行います。

当院のリハビリテーション(理学療法)内容

リハビリテーションは、医師による診療と並行して行うことで治療の効果を高めます。
当院では、次のような理学療法(運動療法・物理療法・徒手療法・装具療法など)を組み合わせて、痛みを和らげ運動機能の改善を図ります。

運動療法

「関節の動きが硬い」「足腰に力が入らない」などの問題に対し、理学療法士(国家資格)および日本運動器学会認定セラピストと一緒に1対1で訓練を行います。

  • 筋肉トレーニング
    膝伸ばし運動・スクワット・かかと上げ運動など行って筋肉を強化します。
  • 歩行訓練
    初めは平行棒を使い、体を左右前後に移動させることから始めます。
    歩行機能の改善に伴って、歩行器、松葉づえ、ステッキなどを使った訓練へ移行します。
    水平な場所が歩けるようになれば、出っ張りを越える、階段の上り下りなども訓練します。
  • 関節可動域訓練
    狭くなった関節の可動域を広げるための訓練です。
    痛みを感じる位置まで動かしますが、動作をやめた後まで続くような痛みは通常ありません。

物理療法

温める・冷やす・電気刺激・振動などの物理的刺激によって、患部の血行促進や痛みの改善を図る治療法です。物理療法は運動療法と一緒に行うことで、機能改善の効果を発揮します。

当院で使用している機器は、院長が実際に国内メーカーの機器を体験して厳選した機器を取り揃えています。

  • ホットパック(温熱療法)
    温めた保温性の高いパックを患部に当てる治療です。
    首の痛み(頚部痛)、腰痛など関節痛、筋肉の凝りや関節の強張り・関節が固くなることなどに効果的です。
  • 干渉波治療(低周波治療)
    干渉波治療は2つのパットから異なる周波数の電流を流します。
    交差する部分に低い干渉電流が発生することによって筋肉刺激を促し、このポンプ作用により血流改善や痛みの緩和が期待できます。
    痛みがある疾患(肩関節周囲炎・変形性関節症・筋膜性腰痛症・坐骨神経痛・足関節痛・膝関節痛・神経痛など)、肩こりなどその他筋肉のコリ、しびれ、膝に水が溜まる(関節水腫)、疲労回復、血行促進などにも効果的です。
    なお、筋肉刺激による効果はパットとパットの間の領域となるので、痛い部分を挟むようにパットを貼ります。
  • SSP(Silver Spike Point)(低周波治療)
    SSP治療は「鍼を刺さないハリ治療」とも呼ばれ、特殊な金属電極をツボに置いて電気刺激(低周波通電)を行う治療法です。
    神経にアプローチして血行促進、鎮痛・消炎効果が期待できるため、腰痛や背中の痛み(背部痛)などに効果的です。
  • 腰椎牽引器(ようついけんいんき)
    座って腰用ベルトを締めるだけで、自動的に牽引治療が行えます。
    椎間板や椎間関節の内圧を下げたり、椎間の隙間(椎間孔)を拡げたりすることにより神経の圧迫が和らぐため、血流改善や痛みの軽減が期待できます。
    慢性的な肩こり・腰痛、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛のほか、脊柱(背骨)周りの神経圧迫が原因の手足・胸の痛み、しびれの緩和にも効果的です。
  • 頚椎牽引器(けいついけんいんき)
    首の牽引(伸ばす作用)と休止(緩める作用)を繰り返すことによって、筋肉や筋膜由来の痛みや頚椎の変形を矯正して、引き起こされていた痛みやしびれを緩和させます。むち打ち症などの頚椎捻挫、頚部脊椎症、肩こり、頚肩腕症候群など腕の痛み・しびれなどに効果的です。
  • ウォーターベッド
    水圧刺激により筋肉・腱・靭帯をやさしくほぐして、血行促進が期待できます。
    また、リラクゼーション効果に優れているので、身体が疲れている方やストレス性疾患がある方におすすめです。
    そのほか、肩こり・腰痛、不眠、便秘症の方にも効果的です。
  • マイクロ波治療器(温熱療法)
    患部に照射して体の深部まで温めます。血液循環や新陳代謝を促進させるため、神経・関節・筋肉などの痛みの緩和、強張り、張りの除去が期待できます。
    変形性関節疾患、肩関節周囲炎、腰痛、腱鞘炎、神経痛、捻挫、打撲などに効果的です。
  • メドマー
    空気圧によって行う足全体の医療用マッサージ器です。
    空気圧によるポンプ効果で血行促進および血液循環の改善が期待できます。
    神経痛・筋肉痛の緩和、疲労回復、筋肉の疲れ、筋肉のこりに効果的です。
  • キセノンレーザー(光線療法)
    キセノンレーザーは、身体の深部を温めることで血流量を増加させ新陳代謝を促す効果が期待できます。
    腰痛、坐骨神経痛、変形性関節症などに効果的です。
  • 体外衝撃波治療
    衝撃波は、圧縮した空気が生み出す強い振動(圧力波)のことです。
    もともと腎臓結石などを破砕するために使われていた技術を応用して、低出力の衝撃波(結石破砕の約1/10のエネルギー)を患部に照射します。
    衝撃波によって痛みを感じる神経の伝達物質を減少させたり組織修復を促したりすることで慢性的な痛みを軽減する治療法です。
    テニス肘・ゴルフ肘など慢性的な腱障害や疲労骨折・偽関節など骨折・軟骨損傷に適応があるとされていますが、今のところ「足底腱膜炎」の治療のみ健康保険が適用されています。
  • 超音波骨折治療器
    微弱な超音波を断続的に照射することで骨折部の治癒促進を図り、通常の保存的治療による骨折治療よりも短期間(約40%の短縮)で治すことが期待できる治療法です。
    元メジャーリーガーの松井秀喜選手や元イングランド代表のデイビット・ベッカム選手などが使用したことで、一般に広く知られるようになりました。
    治療器は約20分程度、患部に当てるだけでよく、治療中の痛みや違和感はありません。
    超音波骨折治療法は2006年から「先進医療」に承認された治療法ですが、一部の難治性骨折などには健康保険の適用が可能です。
    詳しくはお気軽にご相談ください。

※各院で対応している内容が異なりますので詳しくはお問い合わせください。

徒手療法

理学療法士によって行う手を使った治療法です。
痛みの軽減や動きが鈍くなっている組織を改善せるために行います。
主な徒手療法には、次のようなものがあります。

  • 関節モビライゼーション
    理学療法士やセラピストがゆっくりと様々な振幅で可動範囲を反復的に動かします。
    骨や靭帯など関節組織の機能異常がみられるときに行います。
  • 軟部組織モビライゼーション
    「手技」と呼ばれ、痛みと機能改善のために行うマッサージです。
    関節周囲の組織と筋が著しく制限されている場合には、関節モビライゼーションと交互に行うことがあります。
  • 筋膜リリース
    全身の筋肉に張り巡らされている膜(筋膜)をゆっくり解きほぐします。
    筋肉同士の摩擦を減らして滑りを良くする、筋膜の動きの改善を図ることで、痛みの軽減・可動域やアライメント(関節・骨の並び)が改善する効果が期待できます。
  • 装具療法
    サポーターやコルセット、テーピング、インソール(中敷き)などを患者様の状態によって調節して使用します。
徒手療法
ストレッチ・可動域訓練

よくある質問

リハビリは痛いですか?

当院で行っている運動療法・物理療法などのリハビリは、患者様の状態に合わせて、理学療法士が調節して行いますので、痛くありません。
ただし、症状や回復状況により、一時的に痛み(耐えられる程度の最低限の痛み)を感じるリハビリを行う場合があります。
また、リハビリ後、動かしていなかった筋肉に筋肉痛のような軽い痛みが一時的に出る場合もあります。
しかし、リハビリ中およびリハビリ後にずっと強い痛みを感じる、強い違和感が残ることは基本的にありません。
リハビリを苦痛に感じるときには、我慢せず医師・理学療法士・スタッフまでお声がけください。

リハビリはどのくらいの頻度で通えばよいですか?
どのくらい通うと効果が出ますか?
患者様の症状・治療の進み具合などによって、個人差があります。
理学療法士・柔道整復師が患者様に合った適切な頻度をご提案いたしますので、ご相談ください。
また、電気治療などの物理療法は、痛みのある初期では毎日や1日おきなど頻繁に行うと良いでしょう。
どんな服装でリハビリを行けばいいか?

運動療法では、スカート以外の動きやすい服装がよいでしょう。また、物理療法では患部が出しやすい服装が好ましいです。

リハビリの年齢制限はありますか?

特に年齢制限はありません。
お子さんやご高齢の方でも無理なく行える機器を導入しています。
また、患者様にあったリハビリ計画を立てて実施していますので、安心してお受けいただけます。

まとめ

リハビリテーションは「治療」だけでなく「障害の予防」にも役立ちます。

患者様のモチベーション(意欲)が運動機能の回復に有用とする研究報告*2もあります。

*2(参考)“元気・やる気”がリハビリテーションによる運動機能回復と関連することを脳科学的に証明|国立研究開発法人 科学技術振興機構

リハビリテーションを単なる機能訓練として「受け身」で行うのではなく、生活の中で患者様が「積極的に体を使うこと」が何より重要です。

いしがみ整形外科クリニックでは、しっかり診察した上で充分なカウンセリングやインフォームドコンセント*3を行っています。そして、患者様が安心して自ら積極的にリハビリに取り組んでいただけるよう、あらゆる面から全力でサポートします。
一緒に頑張りましょう。
*3インフォームドコンセント:医師による病気・検査・治療などに関する説明を受けて、患者側が十分理解した上で判断が行えるよう支援する考え方。説明と同意。

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